向田邦子さん「無名仮名人名簿」~作品紹介と感想

昭和関連

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今回は、作家向田邦子さんのエッセイ作品、「無名仮名人名簿」の作品紹介と感想、特に印象に残ったお話を書かせていただきます

冷静だけど、ユーモアはどこかにはかなさも併せ持つ向田邦子さんの生み出した文章の数々。

今回紹介する無名仮名人名簿もその素晴らしさに触れることのできる作品となっております。

※内容のネタバレもありますのでご注意ください。

それでは、よろしくお願いします。

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作品の基本情報とおおまかな内容

まずは作品の基本情報をご紹介します。

作品名:新装版 無名仮名人名簿(むめいかめいじんめいぼ)

著者:向田邦子

発行所:株式会社文藝春秋

発行年:2015年12月10日

最初に発行されたのは、1980(昭和55)年8月に単行本として発売されました。

今回ご紹介するのは新装版の文庫本です。

全部で52のお話が収録されています。1つあたりのお話は5ページ前後です。

とっても読みやすいですね♪

テーマは「人間観察」とだと思います。

向田邦子さんの家族、友人、仕事先で出会った人、街中で見かけた人など…たくさんの登場人物がでてきます。

中には個性的な登場人物もいて、初対面なのに「口紅を貸して」と言ってくる若い娘もいたり、列車の暗黙の並び方になじめず周囲と言い合いになる母娘、旅先の外国で出会った豪快に洟をかむおじさまなど...交流関係が浅く、休みの日もあまり積極的に外出しない僕には衝撃?を受けるエピソードもありました。

そして向田邦子さんのエッセイを読むうえで一番欠かせない、父親の向田敏雄さんも登場します。

印象残ったお話

52のお話から構成されているので、絞るが難しかったです。

わたしたちの普段の暮らしでも「ああ!こういう人いそうだなー」という人々が書かれているので、どのお話も共感しやすかったです。

また、1つのお話自体が短いので、ちょっとした時間に読むことができました。

しかし、短いお話ですがテレビドラマを見ているかのように思えるほど、充実しています(さすが向田邦子さん(≧▽≦)ヒュー)。

特に印象に残ったお話を順番にご紹介していきます。

なんだ・こりゃ

なんだ・こりゃというお話は、相手の状況や何をしているかがわからずに、純粋に、ただ正直に「なんだ・こりゃ」とか「何やってんの」と周囲に問いかけている姿を3つのお話を挙げて書かれています(しかも問いかけているのはすべておじさまでした)。

歩行者天国、アングラな劇団の舞台、個性的すぎる帽子を被った女性(向田邦子さん)の姿を見て、おじさまたちは「何やってんの」とバッサリと問いかけます。

茶化そうとか、からかってやろう、という気持ちは微塵も感じらなかったようです。

向田邦子さんの文章によると、ただの空気が読めなかったり、ことの次第が解らない鈍い人…と片付けるのとは少し違うようで、本当に純粋に「何をやっているか、それは何なのか知りたい」といった感じだったそうです。

なんだ・こりゃと言われた側は一生懸命で気持ちも熱いので、シラケさせられて気恥ずかしさや多少の怒りもあるかと思います。

しかし、気恥ずかしさや怒りを感じるということは、言われた側もふと我に返るのではないでしょうか。そう言えば、虚しいかも。ちょっと馬鹿馬鹿しいかもしれない、と。それをただ正直に純粋に言われてしまうと、尚更かもしれません。

正式魔

正式魔って何だろう?と思いますが、ズバリ何でも何か新しいことを始めるとき、形から入る人のことです。

高くて良い道具を買い揃えたり、環境を整えすぎたりと張り切って準備をしてしまいますが、いざ始めてみると挫折してしまう人は多いのではないでしょうか(自分も含めてですが(^^;))。

道具は正式に一切合切揃えてしまう…向田邦子さんの父親もまた、物事を始めるときには何でも「正式」に形から入ることにこだわっていました。

少女時代の向田邦子さんはそのために学校で恥をかき、つらい思いもします。

しかし、お父さんの夕食時に「訓戒を垂れる」描写はとてもおもしろかったです。

挫折したことのある人は、思い当たることもあって共感できそうですね。

向田邦子さんはどちらかというとなんでも簡潔に済ます「略式」のほうが好きと書かれていました。

しかし、向田邦子さんもやはり娘なのか「正式魔」の血が騒いでしまい、ある行動を起こしてしまいます。

最後の締めの一文がすべてを持って行かれて、面白かったです。

黒髪

街中のビルの化粧室で見かけた、異常に髪の毛を大事にケアをしている女性や、美声をいつも自慢している知り合いのお男性のことが書かれています。

たった一つしかない自慢できることにしがみついている、ちょっと哀れな人達...

それは今でいうマウントや、必要以上のSNS自慢に繋がるなぁと思いました

本当に幸せで、人生が充実している人は、あまり周りにひけらかすことはしないですよね😢

自慢している本人は満足でも、自慢されている周囲はウンザリ…ということもあります。また、自慢された側もいつも同じで心のこもっていない褒め言葉を発します。

…しかし、僕も気をつけなくてはと、教訓を得ることができました。

(※とはいえ、一つも自慢できることはないのですが(^^;))

人間の「弱さ」を巧みに、冷静に描いていてとても心に響きました。

キャデラック煎餅

こちらのお話を読んでまず思ったことは、向田邦子さんの自宅マンション…すごくお屋敷なんだなー(*’▽’)と驚いたことです。

自宅マンションの玄関前には、各住人のお迎えの車が来ているそうで、その時の様子が書かれています。

その中でもひときわピカピカに輝いているキャデラックという車の運転手の姿。

他の送迎車の運転手同士がおしゃべりをしながら休憩をしているのを横目に、黙々とキャデラックを磨いています。

主人からの差し入れのお煎餅を、座席にこぼさないように慎重に食べていたそうです。

そこから向田邦子さんが子どもの頃に観たエノケンの映画、そして若き日の働く自分の父親へとリンクしていきます。

エノケンの映画は、何という題名なのかが気になりました。

多少無理をして周りに笑われようと、周囲から孤立しようと、貫く仕事への姿勢が描かれていました

自分の信念を持って、仕事をすることは、素晴らしいなと思いました。

女子運動用黒布襞入裁着袴

女子運動用黒布襞入裁着袴。最初は一瞬何のことだろう?と思いました。

読み方はじょしうんどうようくろぬのひだいりたつつけばかまで、体育で履くブルマのことです。

向田邦子さんの学生時代から、現在までの英語にまつわる苦い経験が描かれています。

向田邦子さんの学生時代(中学~高校生くらい)はちょうど戦争中でした。

戦争中は、英語の授業はもちろん、英単語を使うことも禁止されていました。

カタカナのものは大体英単語なので、ブルマのことも無理矢理日本語でこう呼んで憂さを晴らして?いたようです。

そんな学生時代を送ったせいで、英語に対しては苦手意識を持ってしまいます。

そもそも習っていた英語自体も、ずいぶん後になって通った英会話教室の先生に「たいへん古めかしく、ウイリアムシェークスピアのような英語」と指摘されてしまう始末でした。

※ここは読んでいて笑ってしまいました(^^;)

外国旅行へ行くのに、英語を話せないのはまずいと思って、高い月謝を払って通っていたそうです。

ここで読んでいて感じましたが、前述した「正式魔」のお話ともちょっと繋がっていますね。

向田邦子さんもなかなかの「正式魔」で、お父さんと似ているなと思いました。

今の日本語は、英単語に頼りすぎている印象です。使っている英単語をすべて日本語で話すのはとても難しいのではと思いました。

本日のまとめ

本日は、向田邦子さんのエッセイ「無名仮名人名簿」の作品紹介と感想、印象に残ったお話を書かせていただきました。

少女時代や女学生時代のお話も盛り込まれていてほっこりしました。

いつの時代も、女子学生の考え方や思いは変わらないんだなということを感じることができました。

たくさんの人々に出会っているからこそ、そしてただぼんやり見ているだけではなく、この観察する力があるから、素敵なドラマが描けるのだろうと思いました

ぜひ皆さんも読んで欲しい一冊です。

本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。

コメント

  1. みけねこ より:

    記事を読ませていただきました。
    向田邦子さんの本はまだ読んだことがないので、今度読んでみようかと思います!

    • mkszmss0616 より:

      ブログ記事をご覧いただき、そしてコメントありがとうございます。
      向田邦子さんの本を通して、たくさん学んだり感じることができました。ぜひ一度読んでみていただければ嬉しいです!

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