静原スズカのまったりブログをご覧いただきありがとうございます。
今回は、向田邦子さんのエッセイ「夜中の薔薇」の作品とあらすじ、感想の紹介を書かせていただきます。
幼い頃から本を読むことで言葉に親しんできた向田邦子さん。大人になって作家として仕事を始め、飛行機事故で亡くなる最後まで言葉と向き合ってきたのが作品全体から伝わってくる作品となっております。
また、本のタイトルにも上品さやセンスが伝わってきます(夜中の薔薇という言葉ができた経緯も書かれていて、ユーモアもあります)。
読んでいて特に印象に残ったお話を紹介します。
※内容のネタバレもありますのでご注意ください。
それでは、本日もよろしくお願いします(^^)/
作品の基本情報とおおまかな内容
作品名:夜中の薔薇
著者:向田邦子
発行所:講談社
発行年:1981(昭和56)年10月
1981年が初出ですが(向田邦子さんはこの年の8月に亡くなっています)、1984年に講談社文庫で刊行され、のちに改訂されています。
僕が持っているのは新装版 夜中の薔薇です。2016年2月に発行されました。
向田邦子さんが携わった生前最後のエッセイ集です。😢
全部で62のお話が収録されています。大きく分けて3つの章で構成されています。
一つのお話は2ページから8ページくらいで完結しているので、スキマ時間に読むことができます。
家事やお仕事の合間にひと息つきたいときにオススメです。
最初の章は、向田邦子さんの子ども時代の思い出や、直木賞を受賞した時のこと、普段の暮らしで見つけたことや思ったこと、食べ物のこと、旅行先での思い出が書かれています。
2番目の章は、お仕事の話(寺内貫太郎一家のことも書かれています♪)や「男性鑑賞法」といったエピソードが書かれています。
最後の章は、少し長めの文章のエッセイが3つ書かれています。有名な手袋をさがすもこちらに収録されています。
1 印象に残ったお話
たくさんのおもしろくて良いお話があるので、絞るのは難しかったですが…読んでいて特に印象に残ったお話をご紹介します。
まずは最初の章です。本書の半分以上のページを占めています。
夜中の薔薇
この本のタイトルにもなっているお話です。やはりこのお話をあげないわけにはいきません(≧▽≦)
なんだか美しく、妖しくも思える言葉ですね。
本当は、シューベルトの曲「野中の薔薇」を聞き間違えたそうです(笑)
確かに、歌詞の聞き間違いはよくあることですよね!共感しました。
夜中に見る花、特に薔薇は昼間に見るよりも美しそうですね。僕は普段あまり花とは関わりのある生活はしていないので、花びらの落ちる音や気配とかは感じ取ったことはなかったです。
しかしこのお話を読むと、不思議とそんな情景が浮かんでくることができました。
「夜中の薔薇」という言葉から連想された向田邦子さんの昔のエピソードを織り交ぜた文章が続きます。
その中でも、女学校時代に女の先生の下宿先にお泊まりした時のお話が一番印象に残りました。
少女だった頃の向田邦子さんにとって、まさに美しくも妖しい「夜中の薔薇」だったのだなと思いました。
襞
女子学生というのは、どんなに時代が移り変わっても彼女たちは変わらないのだなと思いました。
身なりでも些細なことが(このお話の中では、寝押ししたスカートの襞が変に折れてしまうこと)が気になり、一喜一憂してしまうところは、僕自身も経験したことがあるなーと、懐かしい気持ちになりました。
また、女子学生時代が戦争中だということで、その時の様子や重みもよく伝わってきました。
その中でも、日常の些細なことでも笑ってしまう向田邦子さんはじめ、同級生の女の子たち。箸が転がってもおもしろいと思える年頃ですね♪(僕も昔はそうだった…遠い目)
直木台風
向田邦子さんが直木賞を受賞された時のことを、臨場感?たっぷりに描いていておもしろいお話です。
↓ちなみに、直木賞作品が収録された「思い出トランプ」の作品と感想の紹介を書いた記事もございます。ぜひご覧ください。
まさしく台風のように、あっという間に駆け抜けていきます。嬉しい慌ただしさです。
それにしても、「辞退しろ」と言う人から電話がかかってくるとは信じられないと思いました。
人気のある人にはアンチもいるのですね。
お話の最後の方にも書かれていますが、こういう出来事はその瞬間ではなくて、過ぎ去って少し時間を置いたらだんだんと噛みしめたり、実感が湧いてくるものですよね。
向田邦子さんは11月28日生まれの射手座です。ちなみに僕も射手座なので、勝手に親近感を抱いてしまいました。
細い糸
直木賞を受賞された時のことを、子どもの頃からの出来事を織り交ぜて振り返っています。
やはり向田邦子さんは、子どもの頃から本や文章に触れて、親しんでいたということが伝わりました。
この時から、受賞されたその瞬間まで縁として“細い糸”で続いていたのでしょうね。
ことばのお洒落
短い文章ですが、とても良い内容です。
このお話に出てくる、ノリのイイ駅員さんが素敵です☆
お洒落というのは、ファッションやお化粧だけではないのです。自分の内から出てくることばも、美しいことばを使えば最高のアクセサリーになります。
向田邦子さんが書かれている、ことばは一生使えるというところに大変共感をしました。
流行の言葉は、確かにその時はかっこよくておもしろいかもしれませんが、やはり歳を重ねても、ずっと使える美しいことばを使えたらいいですね。
ファッションもお洒落だった向田邦子さんの様子が伝わる書籍です。
言葉は怖ろしい
前のお話と対照的なタイトルでおもしろいです。
確かに言葉は、人を傷つける凶器にもなりえるからなかなか難しいですね…
ちなみに前のタイトルは「ことば」と平仮名表記ですが、こちらのタイトルは「言葉」と漢字表記になっています。
向田邦子さんが意図して付けたのかは不明ですが、前のお話で伝えたいお洒落さや美しさを柔らかい平仮名で表現して、今回のお話で伝えたい戒めとかを漢字で表現しているのかな?と考察しました。
残った醬油
以前読んだ向田邦子さんの本にも、同じようなお話が乗っていたのでおおーっとテンションが上がりました。(「霊長類ヒト科動物図鑑」の中に収録されている「たっぷり派」というお話です)
向田邦子さんの父親の向田敏雄さんは、怒鳴って怖いですが、食べ物を粗末にしてはいけないということをしっかり教えてくれていたのですね。
確かに、必要以上にタレやソースをドバドバかけたり、漬けるのはもったいないですよね(;^_^A
食わらんか
向田邦子さんの料理好き(作るのも食べるのも)がよく伝わるお話です。
ここで紹介されている海苔弁の作り方は、シンプルだけど難しそうです。海苔弁に加えて豚のしょうが煮と、塩焼きの卵も付けるそうですが、とても美味しそうです(≧▽≦)
中華風の炒り卵で作るパターンもあるそうです。
向田邦子さんが子どもの時にお母さんに作ってもらったそうですが、きっと思い出の詰まったお弁当なんだと思いました。
他にも、向田邦子さんが振る舞う料理がいくつか紹介されています。
若布の油いため、豚鍋は特に印象的です。
豚鍋は豚ロースとほうれん草を酒、にんにく、しょうがの入ったお湯でくぐらせて、レモン醬油で食べる…もう読んでいるだけで食べたくなって来たので、今度試しに作ってみる予定です。
これを「常夜鍋」と呼ばれているそうですが、本文中にはどこにも見当たりませんでした。
他にも美味しそうなレシピが紹介されているので、向田邦子さんを想いながら作って食べたいです。
2 印象に残ったお話
続いて、2番目の章で印象に残ったお話をご紹介します。
寺内貫太郎の母
人気ドラマ「寺内貫太郎一家」に出てくる「おばあちゃん」の寺内きんさんの生い立ち、容姿、性格など細かいプロフィールが書かれています。
以前この本を読んだ時は、まだこのドラマを見たことがなかったのでイメージががわきにくかったですが、ドラマを見た後に読み返すと「なるほど、そういうことか~!」とスッと入ってくることができました。
このお話の文章の中で他に印象に残ったことは、向田邦子さんの母方の祖母のエピソードでした。
「口の悪い女」だったそうです。僕もたまにこういう人には遭遇することがあります。
そういう時には、元の性格が悪いのか、歳を重ねて口が悪くなったのか…考えてしまうことがあります(;^_^A
男性鑑賞法
雑誌アンアンで、役者、カメラマン、ギタリスト、調理師、落語家など8人の男性を紹介しています。
ここで取り上げられた方々は、現在どうされているか調べたところ、60~70代くらいになった今も活躍されています(残念ながら、亡くなってしまった方もいらっしゃいます)。
向田邦子さんが見た男性たちを、鋭い観察力で紹介されています。
皆さんそれぞれの仕事に就いて生き生きとして、魅力的に感じました。
3 印象に残ったお話
次は最後の章で印象に残ったお話をご紹介します。
手袋をさがす
まさしく向田邦子さんの真骨頂とも言える、端的に言い切る清々しい文章です。
しかし、父の詫び状などのエッセイに出てくる文章の構成とは一味違うなと思いました。
例えば、向田邦子さんの書いたエッセイは複数のエピソードが書かれていて、最後のそのお話のタイトルに繋がる答え合わせのような感じになっています。
そういう少し違う書き方を発見できたのがまた、嬉しさも感じました(笑)
こちらのお話は、「向田邦子」という一人の人間として、女性として、また働く社会人としての生き方や考え、決意といったもの、妥協しない気持ちが強く伝わってきます。
本文中にも出てきたエピソードですが、冬の間に気にいった手袋が見つからないので素手で過ごしたために、風邪をひいてしまった向田邦子さん。しかし気に入らない手袋をするよりはしない方がましだし、そのせいで風邪をひいたわけではない、だから仕事も休まないのよ、というところに感動しました。
(それでも体調不良ならしっかり休んだ方がいいので、仕事を休まないことがカッコイイというわけではありませんが、こういう根性のあるところがあらゆる行動に繋がっていたのかなと思いました)
そんな姿を見た当時の上司から「助言」をされます。確かにその助言は親切かもしれませんが、結婚することだけが女性の幸せなのか…色々悩む向田邦子さんです。
そして向田邦子さんは、この当時は「頑固」とか「異質」と思われていたのかもしれませんが、「一生手袋をさがそう」=「一生自分は何をやりたいのかさがそう」と決意します。
こういう一つに決めることが、とても清々しく思えて、心を打たれました。
向田邦子さんは、自分の不器用さをよくわかっていたのですね…僕から見れば器用そうな方に見えますが( ;∀;)✨
常に「何かを探している」向田邦子さん。芯の強さが感じられました。
この本の中でも一番印象に残ったお話でした。
この「夜中の薔薇」という本を読むと、ますます向田邦子さんのことを好きになります
今回は、向田邦子さんのエッセイ「夜中の薔薇」の作品と感想の紹介、印象に残ったお話を書かせていただきました。
熱い思い&オススメしたい気持ちが強くて、超長文になってしまいました(;^_^A
ちょっぴり食いしん坊?だけど強い意志と信念を持って仕事に生きた向田邦子さん。
子どもの頃から言葉や本に慣れ親しんで、美しいことばは最高のお洒落だということを読者に伝えた向田邦子さん。
この本を読めば間違いなく、向田邦子さんのことをもっと好きになります!(*^▽^*)
この記事を読んで、「読んでみたいなー」とか、「昔読んだことがあるけどまた読み返してみようかなー」と思っていただければ嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
終
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