向田邦子さん「思い出トランプ」あらすじ紹介と感想 大根の月 花の名前など

昭和関連

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静原スズカのまったりブログをご覧いただきありがとうございます。

僕が尊敬して止まない作家 向田邦子さんの短編小説集「思い出トランプ」のあらすじと感想を書かせていただきます!

前回にも紹介しておりまして、本書の前半部分のあらすじと感想をご紹介しました。

向田邦子さん「思い出トランプ」あらすじ紹介と感想~かわうそ 犬小屋など
静原スズカのまったりブログをご覧いただきありがとうございます。本日は、現在でも多くの人に愛されている作家 向田邦子さんの短編小説集「思い出トランプ」のあらすじと感想をご紹介します。この「思い出トランプ」は、何といっても19...

本の後半部分、「大根の月」、「りんごの皮」、「酸っぱい家族」、「耳」、「花の名前」、「ダウト」をご紹介します。

一つ一つのお話は、ネタバレも含まれていますのでご注意ください。

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後半にも直木賞受賞作品あり!「花の名前」。そして印象に残ったお話は…

「花の名前」は、やはり読んでいてゾクゾクするような良い作品となっております。

後半の作品は、個人的にですが少し難しいなと思う内容が多かったです。

特に「酸っぱい家族」、「耳」は難しく感じました。ただ、人間の闇や好奇心、後ろめたいことなどを描いているんだろうなということがわかりました。

僕が印象に残ったお話は「大根の月」です。

ここに登場する主人公には、もう一度頑張ってほしい…!と応援したくなってしまいました。

次からは一つ一つのお話紹介です。

大根の月

印象に残っているお話であり、衝撃的なお話です。

主人公の英子が、過ちで自分の子どもを怪我をさせてしまったという気持ちを想像したら、身がよじれてしまう気持ちになってしまいました。

それにしても、幼い頃に身についた癖というのは、大人になっても抜けないものなのですね(切り損ねた野菜やお肉を慌てて口に入れるところ)。

一つ疑問に思ったことは、英子の夫の秀一です。悪い人ではないが、なぜ英子が子どもを怪我させたときに声をかけなかったのかが謎です。怒り狂っているのか、軽蔑しているのか…(・・?

英子の「ケチをつけて」吹っ切るように努力する姿には共感しました。

何もかもにケチをつけないとやっていけない(例え相手が我が子であっても)、自分を保てないというところです。

お話の最後の方の文章は、作者向田邦子さんが今まで抽象的に表現していた文章が、打って変わってストレートに書いてあるところに驚きました。

夫の秀一の、ハッキリとした気持ちを表しているのかなと思いました。

また元の仲のいい家族に戻ってほしいなと応援したくなるお話です。

りんごの皮

主人公の時子は、玄関先で恋人?の野田と“生臭い声”を立てているところを、借り物をしに訪ねてきた弟 菊男に偶然聞かれてしまいます。そこから、菊男との昔のことを思い出していくお話です。

りんごの実は弟の菊男、皮は時子を表しているところが面白いです。

時子がりんごの皮を、ゆっくりと食べる描写が印象的です。自分は自分なんだと、これからの決意のようなものを感じられました。

なんだか少しだけ、耽美な印象も感じました。思春期の姉と弟の微妙な距離が…( `ー´)ノ

ちなみに、このお話に出てくる「赤い線の入場券」の意味は最初よくわかりませんでした。(^^;)

昔の国鉄の入場券は、切符の真ん中に赤い線が書かれているのですね…

酸っぱい家族

飼い猫が誰かの家で飼っているオウムをくわえてきてしまい、妻と娘に非難されながらも捨てる場所を探し回る男、九鬼本のお話です。

なかなかオウムを捨てられずに、会社まで持って来てしまいます。若い頃のことも回想されて描かれていますが、なんだか思いきれない優柔不断な人、という印象です。

しかし、僕にも思いきれないところはあるので、主観的に見れば共感してしまいます。

一つ気になったことは、若い頃に一時期交流のあった写真屋の娘、京子とはその後どうなったのかがです。誤解を生んだままでもどかしさがありました(笑)

体調不良で会社を休んだ楠は、水枕の音を耳で聞いているうちに昔のことを思い出します。そして大胆に、家の中の家族の持ち物を物色し、荒らしてしまいます。(;^_^A

見てはいけないもの、触れてはいけないことを無性に知りたくなる気持ちを描いています。

向田邦子さんは、こういった人間の後ろめたさを描くのがすごくてどの登場人物にも共感してしまいます!

昔のことって、ちょっとしたことがきっかけで、案外思い出すものですね。

幼なじみの女の子が耳につけている、赤い糸はその後どうなったのかが気になりました。

花の名前

直木賞受賞作品です。このお話が13つのお話のうちの12番目に出てくるとは…作品全体のレベルの高さが伺えます。

登場人物の常子は、夫と子どもが仕事や学業で忙しいために家にいないので、一人ぽっちで過ごしています。その様子の描き方がさみしさを十分に感じさせます。

また、夫が年齢とともに身体も態度も大きくなるところも良く描いています。

夫の松男は子どもの頃から勉強、仕事一筋なので他のことはまったく知りませんでした。

結婚と同時に、花の名前をはじめ、日常のこまごまとした一般常識は妻の常子が教えることになりました。そして、時は流れて花の名前の付いた女の人から電話がかかってきます...

なんだか、恩を仇で返された気持ちになります(# ゚Д゚)

松男は、純粋に、心の底から常子に色々と教わりたかったのか?それとも教わるふりをして実は見下していたのか(・・?常子を踏み台にしてやろうと思っていたのか?そこが疑問でした。

良くも悪くも、松男は成長したんだなぁと思います。

また、若い頃は何でも知っていたが、いつの間にか逆転してしまいます。成長は若い頃で止まったままの常子の愚かさも少し感じました。

ダウト

最後の作品です。

高齢で病気の父親を看取った男、塩沢のお話です。読んでいる側からすると嫌な人だな…と思ってしまいますが、誰にでもこういうところはありそうです。

父親のお葬式のときには、自分とは真逆の生き方をする従兄弟 乃武夫が来てから、過去の嫌なことを思い出します…

体裁を気にする塩沢の様子を細かく表現しています。乃武夫と塩沢の対比、そして亡くなった父親までもが未だに入り込んでいます。

自分が何か悪いことや後ろめたいことをしたときに、誰かに見られてしまったのではないか( ゚Д゚)?と焦って不安になる心理がよくわかりました。

最後のまとめ

2回にわたって、向田邦子さんの短編小説集「思い出トランプ」についてのあらすじと感想の紹介をさせていただきました。

40年以上前の作品ですが、現在でも有り得そうな描写が多く、共感することができました。ただ、読んだ後は「感動した!!」とか「心が洗われてさわやかな気持ちになった♪」というよりは、「人生や人間関係について別の意味で勉強になる」といった感じです

「人間の裏側とか後ろめたさ」を描いているのでそういうところは今後の参考になりました。例えば僕は、あまり浮足立ったり悪いことをしていると、あとあと自分が嫌な気持ちになるんだな…というところが勉強になりました。

もしも、この記事を読んでいただいて読みたいなーとか、以前読んだことがあるけどまた読み返したいなぁと思っていただければ嬉しいです。(≧▽≦)

電子書籍もあります。

それでは、長くなりましたが最後までお読みいただきありがとうございました。

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